トップページEU関係>欧州連合司法裁判所(概要)

 

欧州連合司法裁判所(概要)

http://www.curia.europa.eu

Ⅰ.欧州連合司法裁判所

Ⅱ.司法裁判所

Ⅲ.一般裁判所

Ⅳ.専門裁判所

Ⅴ.活動概況

Ⅵ.リスボン条約による主要な変更点

 

. 欧州連合司法裁判所

 

 

名称

The Court of Justice of the European Union

 

所在地

ルクセンブルク市(ルクセンブルク大公国)

 

沿革

1952年に欧州石炭鉄鋼共同体司法裁判所として創立。

1958年に他の共同体の設立とともに、欧州共同体司法裁判所となった。

1989年には、第一審裁判所(現一般裁判所)が創設の上、併設されている。

2005年、欧州連合公務員裁判所が設置される。

2009年、リスボン条約の発効により、欧州連合司法裁判所となる。

 

機能

●欧州連合条約(以下、TEU)及び欧州連合の機能に関する条約(以下、TFEU)の解釈と適用における法の尊重の確保(TEU19条1)

●TEU及びTFEUに従って

(1)加盟国、EUの機関、法人又は自然人の行為について裁定

(2)加盟国の裁判所の要請に基づき、EU法の解釈又はEUの機関の行為の有効性についての先決裁定

(3)その他基本条約に規定する事件についての裁定

(TEU19条3)

 

構成

司法裁判所(Court of Justice)、一般裁判所(General Court)、専門裁判所(specialised court)からなる(TEU19条1項)。

 

管轄権

TFEU258~273条に規定する事件について管轄

ただし,共通外務安全保障政策(275条)及び警察権執行の適法性等(276条)を除く

 

訴訟対象事項(類型)等

(1)義務不履行訴訟(Actions for failure to fulfil obligations(TFEU258~260条)

欧州委員会又は加盟国は他の加盟国のEU法不履行に対して申し立てを行うことができる(なお、加盟国は右に先立ち欧州委員会に提起しなければならない)。

(欧州委員会の指摘により加盟国が是正措置を執る猶予が与えられた後、改善が見られない場合に欧州連合司法裁判所にて審理されることとなる。なお、裁判所による決定の後も改善が見られないと裁判所が認めた場合には、一時金又は罰則金を課すことができる。)

(2)取消訴訟(Actions for Annulment(TFEU263、264条)

EU関係機関による各種措置(規則、指令、決定)の取消を求める訴訟。加盟国が欧州議会、理事会に対し提起する訴訟又はEU機関同士の訴訟については司法裁判所の専管事項となる。同申し立ては、加盟国、EU機関及び措置の当事者たり得る自然人・法人が行うことができる。

(3)不作為訴訟(Actions for failure to act(TFEU265条)

欧州議会、欧州理事会、理事会、委員会又は欧州中央銀行による不作為について、加盟国及びEUの他の機関は、その不作為の確認を求めて欧州連合司法裁判所に提起することができる。また、全ての自然人・法人も(勧告・意見以外の)EU機関の不作為に対して不服を申し立てることができる。

(4)補償(損害賠償請求)訴訟(Application for Compensation(TFEU268条)

欧州連合司法裁判所は、欧州関係機関によって欧州市民にもたらされた被害等についての補償の適用について審理する。

(5)控訴(Appeals

一般裁判所の裁決に対して法的な部分に関し、控訴を行うことができる(欧州連合司法裁判所規程(以下、規程)56~61条)。

(6)先行判決(先決的判決)(References for preliminary rulings(TFEU267条)

欧州連合司法裁判所がEU法体系の最終的な番人としての役割を果たしており、先行判決制度は、EUに固有なものとなっている。

EU法、特に各種(設立)条約や下位法(理事会規則、(欧州)指令、決定等)については、加盟国の市民に直接に関わるものであり、右を管轄する個別の加盟各国裁判所もEU法の番人であると言える。しかしながら、EU法の効果的かつ統一的な適用の観点から、時として加盟国の国内裁判所はEU法の解釈の確認、明確化の観点から欧州連合司法裁判所に照会し、当該加盟国の国内法がEU法に適合しているかを確認することが必要となる。EU法上の行為の適法性審査を求める場合もある。

同観点から国内裁判所が欧州連合司法裁判所に対してEUとの関係で照会を行い、同意見を下すことを先行判決(先決的判決)と呼んでいる。

なお、欧州連合司法裁判所によって、ある事項に対して判決(先行判決)がなされた場合には、照会を行った当該国裁判所が右に従うだけでなく、他の加盟国においても同様の事項については拘束されることとなる。

<裁量による付託と義務的付託>

【裁量】加盟国裁判所において判決を下すにあたり欧州連合司法裁判所の判断が必要と考える場合には、これを付託することができる(court or tribunal may)。(TFEU267条2段)

【義務】国内法的に担保されない場合=決定が国内法上、上訴を許さない時には、これを欧州連合司法裁判所に付託しなければならない。(shall bring the matter)TFEU267条3段)

使用言語

欧州連合司法裁判所において使用される言語は、EUの公用語である23言語であり、法廷毎に関連したそのいずれかの言語にて審議が進められる。先行判決手続や判決の公表時においては23言語に翻訳される。

 

Ⅱ. 司法裁判所

                              TOP

 

.名称

The Court of Justice

 

.所在地

ルクセンブルク市(ルクセンブルク大公国)

 

.管轄権

(1)一般裁判所又は専門裁判所の裁定に対する上訴事件(ただし上訴は法律問題を理由とする場合に限られる)(TFEU256条1後段)

(2)一般裁判所が一審の管轄を有しない事件(加盟国のEU法違反審査等)(規程51条)

 

.組織・構成

裁判官(Judge):各加盟国から1名、任期6年、再任可能(TEU19条2、TFEU253条1・2段)

独立性に疑いがなく、かつ、各国の最高裁判所への任命に必要な資格を持つ者又は周知の能力を持つ法律家の中から選ばれ、候補者の適性に関する意見を提示するパネルとの協議の後に全加盟国の総意によって任命される。なお、3年毎に一部改選を必要とするが、14人・13人の改選で良い(規程9条)。

裁判所長官 (President)裁判官の互選により選出、任期3年、再任可(TFEU253条3段)

裁判所副長官 (Vice-President):裁判官の互選により選出、任期3年、再任可(規程9a条)

 

法務官(Advocate General):8名、任期6年、再任可能(加盟国数には関係なく任命)(TFEU252条、253条)

この点、リスボン条約の最終文書に付属する宣言A.条約の規定に関する宣言38により、司法裁判所の要請により理事会の全会一致で3名の増員が可能である。

首席法務官 (First Advocate General):司法裁判所が任命、任期1年(司法裁判所手続規則(以下、「手続規則」)10条)

【法務官の任務】裁判所を補佐し、案件に関し、完全に公平かつ独立の立場から、理由を付した意見を公判に提出する。

 

裁判所事務局長(Registrar):司法裁判所は、事務局長を任命し、同事務局長の任務につき規定を設ける。申請書類の受理、登録手続き、官報掲載手続きその他運営事項を担う。

 

補佐官(Legal secretary):各裁判官及び法務官は、それぞれ独自の官房(Cabinet)を有しており、裁判官は3名の、法務官は4名の補佐官を擁している。裁判所長官の官房には10人の補佐官が働いている。同補佐官は、準備報告書、ヒアリング用報告書、判決・意見草案等をはじめ、各種調査・情報収集を行い、他の裁判官官房、裁判所事務局等と連携を密にしながら業務を行う。

 

裁判の法廷・運営

【法廷】

・全法廷(Full Court)開廷は希(裁判官定足数1 7)。

・小法廷(Chambers)殆どがこの小法廷にて開催。3人又は5人の裁判官が担当する。多数意見が有効評決となるには最低3名の賛成が必要。

・大法廷(Grand Chamber)特に重要な案件については、大法廷にて開催。裁判長は、長官が務め、裁判官総数は1 5、有効判決は最低11名の出席が必要)。

【総会(General Meeting)新規案件については、全ての裁判官と法務官から構成される総会にて検討され、どの法廷にて扱うか決定される(手続規則44条)。

 (当事者である加盟国又はEU機関が大法廷での審理を要求した場合には、大法廷で審理しなければならない。)

 

訴訟手続

(1)直接訴訟

【提訴】 原告より書面にて申し立て(提訴)が事務局に提出され、直ちに正式登録された後、事務局よりEU官報に内容と共に掲載される。当該法廷を担当するラポルトゥール(首席判事)及び法務官が任命される。被告側に対して、申請事項が伝えられ、1か月の期間反論等の機会が与えられる。原告はこれに対する回答等を(1か月間)行う期間がある。

【準備・ヒアリング】ヒアリング等を行うか否かの決定を行う。ラポルトゥールや法務官からのレポート等から、更なる情報・資料提供等が必要か否か判断する。

【審議・判決】裁判官及び法務官による公開審理を行い、ラポルトゥールの判決案を基本に裁判官による審議の上、判決が公開法廷にて行われる。

(2)先決手続

 国内裁判所が司法裁判所に対して照会を行い、司法裁判所翻訳局が右文書をEU公用言語全てに翻訳の上、事務局は訴訟当事者、全加盟国及び欧州関係機関に通報し、EU官報にも概要が掲載される。当事者、加盟国及び欧州関係機関は2か月間書面による意見を提出することができる。以降の手続きは、直接訴訟に同じ。

 

Ⅲ. 一般裁判所

                              TOP

 

.名称

General Court

 

.所在地

ルクセンブルク市(ルクセンブルク大公国)

 

.沿革

1989年に創設。

 

.目的・機能

●2審制司法システムの整備。(+役割分担による司法裁判所の負荷軽減)

 ・一般裁判所での審理の上、法的な問題については欧州司法裁判所に控訴することができる(法律審)。

 

.組織・構成

●裁判官(Judge)27名、任期6年、再任可能。

・独立性に疑いがなく、かつ、各国の最高裁判所への任命に必要な資格を持つ者又は周知の能力を持つ法律家の中から選ばれ、候補者の適性に関する意見を提示するパネルとの協議の後に全加盟国の総意によって任命される。なお、3年毎に一部改選を必要とする。

一般裁判所長官(President)裁判官の互選により選出、任期3年再選可

●法務官制度は有しない

●裁判所事務局長(Registrar):司法裁判所とは独立して別途事務局長を置く。事務局長は、裁判官により6年の任期にて任命される。なお、通常運営業務については、司法裁判所に依存。

【法廷】

・全法廷(Full Court)開廷は希。

・小法廷(Chambers)殆どがこの小法廷にて開催。3又は5人の裁判官が担当する場合が多いが、1名の場合もある。

・大法廷(Grand Chamber)特に重要な案件については、13人の裁判官による大法廷にて開催。

 

 

. 訴訟手続

書面審理と口頭審理があり、提訴者の選択する言語によって審理が行われる。

 案件の審理入りに際し、ラポルトゥール(首席判事)が長官によって任命される。

書面審理の後、口頭審理を公開法廷にて行う。なお、審理は、必要に応じて同時通訳により幾つかのEU 公用言語に訳される。判決は、司法裁判所同様に、ラポルトゥールの判決案を下に審理・決定の上、公開法廷にて判決を下す。

 

. 管轄権

TFEU263、265、268、270及び272条における第一審(公務員裁判所で取り扱われる事項及び司法裁判所のみで取り扱われる事項を除く)

(1)自然人及び法人が欧州関係機関について行う直接訴訟

(2)加盟国が委員会に対して行う訴訟

(3)加盟国が理事会に対して行う訴訟

(4)補償(損害賠償請求)訴訟

(5)一般裁判所に明示的に管轄権を付与する契約に基づく訴訟

(6)欧州共同体商標に係る訴訟

(7)欧州連合公務員裁判所の決定についての控訴審(法律審)

(8)共同体植物品種庁又は欧州化学品庁の決定に対する訴訟

一般裁判所の裁決は、2ヶ月以内に、司法裁判所に控訴できる(法律審)

 

. 専門裁判所(公務員裁判所)

                  TOP

 

.名称

European Union Civil Service Tribunal

 

.所在地

ルクセンブルク市(ルクセンブルク大公国)

 

.沿革

・旧EC条約220条において、第一審裁判所の下に、特定の分野において司法権を行使する裁判体を設置できるとして、専門裁判所の設置を予定(リスボン条約下では、TEU19条、TFEU257条)

・2004年11月2日の理事会決定により、欧州連合公務員裁判所の設置が合意された。(以降、右決定を理事会決定と記述する。また、同理事会決定により定められ、官報の公示をもって発効した欧州連合司法裁判所規程ANNEXについては、ANNEXと記述する)

・2005年10月5日に設置(裁判官による宣誓)。

・現時点で設立されている専門裁判所は公務員裁判所のみ。

 

.管轄権・目的

【管轄権】(従来、第一審裁判所(現在の一般裁判所)の管轄であったものが移管され、)EUと同関連機関職員との間の紛争において、第一審を管轄する。(理事会決定1条/ANNEX1条)。

 なお、職員規定と雇用条件の範囲に限る。(TFEU270条)

 ・法的側面については一般裁判所に控訴できる。

 ・特別な場合には、司法裁判所が最終審。

【目的】従来は、第一審裁判所の3分の1近くの案件を占めていた職員訴訟につき、右を新規に創設された公務員裁判所に移管することにより、効率化を図るもの。

 

.組織・構成

●裁判官(Judge)7名、任期6年、再任可能

裁判官は、理事会によって全会一致によって任命される。

=裁判官は、その独立性が疑いの余地が無く(Beyond doubt)、適性を有する者から選出されなければならない(TFEU257条)。

【選出手続き】理事会は、裁判官の出身国の法体系と、地理的基盤についても最大限に考慮に入れ、(人選)委員会の意見を参照しつつ任命を行う。

【(選出)委員会】(人選)委員会は、司法裁判所、一般裁判所の元裁判官・法務官・事務局長及び有能な弁護士からなる7名により構成される。同委員会及び同運営規程は、司法裁判所長官の要請により、理事会が特定多数決方式(QMV)により定める。( ANNEX3条)

欧州連合公務員裁判所長官(President)裁判官の互選により選出、任期3年再選可(ANNEX4条)

臨時裁判官(temporary judges)(規程62c条)欧州議会及び理事会の共同決定により、臨時裁判官を配置することができる。

 

●裁判所事務局長(Registrar):公務員裁判所は、事務局長を任命し、同事務局長の任務につき規定を設ける(ANNEX6条2号)。

 

.法廷・運用ANNEX4条)

 裁判は、3人の裁判官による小法廷が構成されなければならない。(なお、公務員裁判所手続規則に基づく幾つかの事例によっては、全法廷(7人)、小法廷(5人)、小法廷(1人)についても可能である。)

欧州連合公務員裁判所長官は、全法廷及び5人よりなる小法廷にて裁判長を務めなければならない。(3人の小法廷についても割り当てられた際には、裁判長を務める。)

 

. 活動概況

         TOP

 

 <欧州連合司法裁判所年度報告(2009年)より>

  2009年の結審数は543件(併合の場合を含む)であり、2008年には495件であったのに比べ増加が見られる。このうち、377件が判決で、165件が命令である。この判決数は過去最高である。

 提訴件数は561件(併合の場合を含まない)であり、2008年の592件より減少している。ただし、先行判決を求める照会は増加しており、2009年の受付件数は302件と過去最高である。

 欧州連合司法裁判所では効率化を目標に改革を行っており、緊急仮命令手続、優先取扱い、迅速承認制度、簡略手続き、法務官の意見なく判決を出す制度などの利用に取り組んでいる。

 

. リスボン条約における主要な変更点

 

         TOP

EUが法人格を持ったことにより、「欧州共同体」、「共通外交・安全保障政策」及び「警察・司法協力」の3本柱構造が解消された。この結果、欧州司法裁判所はEUの司法機関となり、裁判所は「欧州連合司法裁判所」と名称変更された。

●裁判官は、全加盟国の総意によって任命されることに変更はないが、候補者の適性について意見を提示するパネル(7人で構成)と協議した後に任命されることとなった(TFEU253、254条)。

●警察・司法協力に関して加盟国の承認なく、拘束力のある先行判決ができるようになった。また、難民・移民等の人の移動の自由については、いずれの国内裁判所も欧州連合司法裁判所に対し先行判決を求めることができるようになった。

●共通外交・安全保障政策分野については、基本的に管轄外のままである。

ページトップへ戻る

 

=

Copyright (C): Ambassade du Japon au Luxembourg | Legal Matters | About Accessibility | Privacy Policy