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ルクセンブルクにおける欧州憲法条約の批准手続・国民投票

(概要)

平成17年6月3日

 

 2004年10月29日にローマにおいて署名された欧州憲法条約は、EU加盟各国による批准手続きを経ることとなっており、ルクセンブルクにおいては、同批准手続きとして国民投票(レファレンダム)を実施することとなっている

 なお、ルクセンブルクには、国民投票の制度自体は1919年に憲法上に定められる等、古くから存在していたが[1]、国民議会のみ国民投票の発議権を有する等の制約がみられた。右を含め、憲法上に規定はあるが、国民にとって十分に活用し得るものかについて疑問無しとしないユンカー首相の下、昨今の同政権における民主的手続きの充実の方向性により、国民による発議権等の問題と合わせて、国民投票の実施についても内容を改める法案が提出され、同前提となる憲法上の改正も進められた。

 この様な背景の下、欧州憲法条約についての国民投票も視野に入れて手続きを取り進めた結果、本年に入り、新たに国民投票に係る法律(手続き一般に係る法律)が整備され、また、欧州憲法条約に係る国民投票実施のための特別法[2]についても採択するに至った。

 ルクセンブルクにおける国民投票制度と今回の欧州憲法条約に係る国民投票につき概要を取り纏めると次のとおり。

 

1.欧州憲法条約の批准手続に係る国民投票(レファレンダム)の概要

 欧州憲法条約の批准手続きとしての国民投票は、参照的性格(caractère consultatif)と位置づけられており、国民議会による投票(第一回目:6月中)が行われた後に引き続いて行われることとなっている。国民議会における第2回目の投票は、第1回目の投票から少なくとも3か月の後に実施されることとなっており、国民投票の結果を尊重[3]することとなっている。

 

 ルクセンブルク政府・欧州憲法条約に係る国民投票公式ホームページ(http://www.verfassung-fir-europa.lu/fr)

 フランス語・ドイツ語

(1)開催日時: 2005年7月10日(日) 8時~14時 

(2)根拠法令:

【国民投票の根拠法令】 

 ルクセンブルクにおける国民投票は、憲法第51条第7項及び同第114条の規定に基づく場合に、実施することができる。

 ●憲法第51条第7項:選挙民は、事項及び条件について法律の定めるところにより、国民投票により自身の意思を表明することができる。

 (Les électeurs pourront être applés à se prononcer par la voie du référendum dans les cas et sous les conditions à déterminer par la loi.

 ●憲法第114条に定める国民投票は、憲法改正に係る場合を規定。

【今回の欧州憲法条約にかかる国民投票の根拠法】

 →今回の欧州憲法条約に係る国民投票は、憲法改正問題ではないので、その他の重要事項について国民投票への道を確保する憲法第51条の規定を根拠として行うもの。

従って、今回の国民投票に係る根拠法令は、以下のとおり。

 (1)ルクセンブルク大公国憲法(第51条第7項)

 (2)国における国民投票に係る2005年2月4日の法律

      http://www.verfassung-fir-europa.lu/fr/referendum/legislation/loi_20050204.pdf

 (3)2004年10月29日、ローマにおいて署名された欧州の憲法を設立するための条約に係る国民投票の実施についての2005年4月14日の法律

   (http://www.verfassung-fir-europa.lu/fr/referendum/legislation/loi_20050414.pdf


 

 

(3)選挙(投票)人

 選挙法に従い、選挙人名簿に登録されている者。

 (=ルクセンブルク在住の参政権を有する18歳以上のルクセンブルク人(選挙法第1条))

(4)国民投票実施方法(第4章)

【選挙区】単一選挙区(第23条)

【中央選挙管理事務所所在地】ルクセンブルク市(第23条)

【投票場所】各コミューンの州庁所在地若しくは選挙法に定める場所(第24条)

【選挙事務所】選挙法の規定による(第26条)

【投票用紙】(第27条)

●用紙の配布:国により、首相・国家大臣の管理の下、投票用紙は印刷、配布される。(中央選挙管理事務所長に配布された後、そこから各コミューン選挙管理事務所長に配布される。)

・遅くとも国民投票の前日までに、各コミューンにおける中央選挙管理事務所は、コミューン内の他の選挙事務所に対して必要部数の投票用紙を封印した封筒によって配布しなければならない。同封筒の外書には、住所、内容の投票用紙の枚数を明記する。

●投票用紙の様式:法律の別添5、6の形式による。投票用紙の印刷は、国民投票日の20日前までに仕上がらなければならない。

●投票用紙の様式(具体的指定)(第28条)

・投票用紙は、冒頭に、実施日及び「~のための国民投票」と明記しなければならない。

・投票用紙は、その中央に、国民に問う質問について、フランス語、ルクセンブルク語、ドイツ語の順に記載されなければならない。

・同質問の左右に、中抜きの四角を設ける(注:チェック欄)。同質問の左側は、反対の意思表明を、同質問の右側は、賛成の意思表明を行うためのものである。

・(投票用紙の質問の)左側の四角の上、左と下に、次の順番で(Noに相当する)語を表記する<<Non>>,<<Nee>>, <<Nein>>

・(投票用紙の質問の)右側の四角の上、右と下に、次の順番で(Yesに相当する)語を表記する<<Oui>>,<<Jo>>, <<Ja>>

・同投票用紙の雛形は、本法律の別添5に示されている。

●投票用紙のサイズ(第30条):投票用紙の大きさは、質問の長さにより異なる。

 法律別添5の投票用紙の雛形の概要

 

 

今回の国民投票において、投票用紙に掲載される質問事項は以下のとおり:

 「あなたは、2004年10月29日に、ローマにて署名された欧州のための憲法を設立する条約に賛成ですか。」

 (フランス語: Etes-vous en faveur du Traité établissant une Constitution pour l'Europe, signé à Rome, le 29 octobre 2004? ) 他2言語(ルクセンブルク語、ドイツ語)

【公示方法】全ての国民投票に関し、首相・国家大臣は、国民投票の実施について、ルクセンブルク日刊3紙に、3回、折り込みによる公報を配布しなければならない。(第32条)

 ●各選挙事務所は、国民投票の15日前に、適切な方法によって国民投票の実施について公表しなければならない。(第33条)

【公示言語】第32条、第33条における公示は、行政3言語によって行われなければならない。(注:フランス語、ルクセンブルク語、ドイツ語)

【選挙事務所の設置】選挙法による。

【投票義務】選挙法第89条及び同第90条に則り、投票は、義務である。(第37条)

【投票】投票は、投票用紙をもって行われる。(第43条)

●各選挙人(投票者)は、一つの質問に対して、1票を有する。

(注:本法律上、一回の国民投票において、複数の事項について投票するケースも想定している。)

【記入】質問の横の四角を埋めるか、×印(か+)を記入する。同記入は、鉛筆、万年筆、ボールペンその他の筆記具にて行う。仮に記入が不完全であっても、故意に投票用紙を解りにくくする意思が見られなければ、有効な投票と見なす。(第44条)

【未使用投票用紙】選挙管理事務所にて全て回収の上、廃棄、数を報告する。(第45条)

【郵便投票】75歳以上の者は、郵便投票が認められる。

【開票】各コミューン内において、それぞれの選挙事務所が開票作業の上、①総投票数、②白紙及び無効票数、③有効投票数、④(それぞれの質問毎に)賛成票数、反対票数について、各コミューンの中央選挙管理事務所に報告を行う(第56条)。

 各コミューンの中央選挙管理事務所は、各事務所からの報告を集計し、コミューンとしての結果を公表する。同コミューンの中央選挙管理事務所長は、同報告書をルクセンブルクの中央選挙管理事務所に届ける(第57条)。

 ルクセンブルクの中央選挙管理事務所は、全てのコミューンからの報告を集計し、国レベルでの結果を公表する。

【結果】有効投票数の過半数の投票をもって、結果とする。

    (賛成投票数が過半数であれば、国民投票が成立したことになる)(第58条)。

    有効投票は、賛成か反対の票を指し、無効・白紙は含まれない。

【最終結果】報告に基づき、首相・国家大臣は、①総投票数、②総白紙・無効票数、③有効票数、④(質問毎の)総賛成票数、総反対票数を確定する。(第60条)

【罰則】 略

 

2.欧州憲法条約に係る国民投票(レファレンダム)実施の決定過程

(1)2004年11月10日: - 政府公表

(2)2005年1月28日:   - 欧州憲法条約の批准についての法案、国民投票に係る法案について閣議にて採択。

(3)2005年2月4日:     - 国民投票(レファレンダム)の実施にかかる2005年2月4日の法律の施行(2005年1月20日に国民議会にて採択、同2月1日に国家諮問院にて採択され、同4日にアンリ大公、ユンカー首相により署名、3月3日付官報に掲載された。)。

(4)2005年4月14日:   - 欧州憲法条約についての国民投票実施にかかる2005年4月14日の法律の施行(2005年4月12日に国民議会にて採択、同13日に国家諮問院にて採択され、14日にアンリ大公、ユンカー首相、アッセルボルン副首相兼外相により署名・18日付官報に掲載された。)。

 

3.最近の動向

 RTL社が行った(ILReS社(リサーチ会社)が実施)している世論調査によると、ルクセンブルクにおける欧州憲法条約の支持率は:

 

 

200411

20053

2005525

18歳以上のルクセンブルク人

Yes

 

64%

59%

46%

No

 

17%

21%

32%

15歳以上のルクセンブルク人及び住人

Yes

 

62%

58%

51%

No

 

15%

16%

24%

18歳以上のルクセンブルク人及び住人

Yes

 

63%

59%

51%

No

 

16%

17%

25%

 

 


[1] 1919928日に、大公家の存続問題と経済問題の2件、そして、193766日に政治団体の解散の是非についての1件で、これまでに3回実施されたことがある。

[2] 憲法第51条による場合には、「案件と条件は、法律の定めるところにより」と規定されており、一般手続き法を別途定めると共に、国民投票を実施する度に、対象事項に応じ、個別の特別法にて右実施を定める。

[3]  s'engage a respecter la volonté des électeurs exprimée lors du référendum du 10 juillet:ルクセンブルク政府、国民投票公式ホームページ上の表現。

 

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