ルクセンブルク情勢(2006年第2四半期4-6月) |
1.概況 |
【内政】 ●施政方針演説:人口の高齢化がもたらす社会保障システム及び財政へのインパクトに鑑み、失業対策、インフレの抑制に努め、賃金物価スライドの時期を遅らせることなどにより、公共財政支出の削減に尽力する。その一方で、家族政策、社会保障負担への国家補助、公共交通手段の発展、環境政策、住居政策、経済の競争力強化に対する補足的財政支出を決定した。
●ユンカー首相、シャルルマーニュ賞受賞(ルクセンブルク人では3人目)。近年では、ブレア英国首相やクリントン前合衆国大統領も受賞した名誉ある賞。ユンカー首相の20年にわたる欧州統合の進展に向けた働きとリーダーシップを讃えたもの。
●欧州憲法条約に関するユンカー首相のコメント:EU加盟25ヶ国が批准プロセスの停止を求めなかったことには満足している。しかし、憲法条約批准の再交渉はあり得ず、憲法条約の呼称を変え、中身を的確に反映したものにすべき。 ●アルセロール社は、ミタル・スチール社によるTOB提案を受け入れ、経営統合することを決定。新会社名はアルセロール・ミタルとし、本社はルクセンブルクに置かれ、雇用の維持、アルセロール社の企業統治モデルが踏襲されることとなった。ユンカー首相、クレッケ経済・通商大臣は、共に、合併案の改善を多とし、歓迎の意を表した。 ●インフレ率:4月1日現在で2.9%、5月1日現在で、3.1%、6月1日現在で3.2%となり、緩やかな上昇傾向にある。 ●失業率: 4月の失業率は4.3%、5月の失業率は4.1%、6月の失業率は4.0%となり、緩やかな減少傾向にある。 ●銀行資産高:4月8299億3300万ユーロ、5月8346億2600万ユーロ、6月8206億6300万ユーロ。 ●投資信託資産高:4月1兆7,022億ユーロ、5月1兆6,576億ユーロ、6月1兆6,521億ユーロ。 (6月に減少傾向が見られる主な理由は、証券市場の値下がりにあると見られている) |
2.主要トピック (1)政労使三者協議合意
公共行政支出が顕著に増加していること、歳入の動向が不安定で、国際情勢の影響を蒙り易いものであることから、ルクセンブルク経済の健全性と競争力を保持するためにも、赤字削減のための方策を交渉することが今回の協議の大きな課題であった。結果として、賃金物価スライドの時期の延期、最低賃金の引き上げ、歳出の見直しとして年金額の改定の延期、歳入の見直しとして、付加価値税、連帯税の引き上げなどが合意に至った。 (2)施政方針演説 ルクセンブルクが置かれている状況は、他国に比して決して悪いものではない。しかし、人口の高齢化がもたらす社会保障システム及び財政へのインパクトは大きいものであることが予想されることから、今後も政府は、失業の減少、インフレの抑制に努め、賃金物価スライドの時期を遅らせることなどにより、公共財政支出の削減に尽力する。その一方で、家族政策、社会保障負担への国家補助、公共交通手段の発展、環境政策、住居政策、経済の競争力の強化に対する補足的支出を行うことを決定した。 これに対して与党・労働組合は好意的な見解を示したが、野党・経営者団体は根本的な構造改革の機会を逃したとして批判の声が上がった。
(3)欧州憲法条約に関するユンカー首相・アッセルボルン副首相兼外相発言 EU加盟25ヶ国が批准プロセスの停止を求めなかったことには満足している。しかし、憲法条約批准の再交渉はあり得ず、憲法条約の呼称を変え、中身を的確に反映したものにすべき。2007年前半の仏・蘭における新政府形成後、早くても2009年まで欧州憲法条約の採択を待つことになろう。
(4)アルセロール社、ミタルスチール社と合併決定 6月25日、アルセロール社取締役会は、5か月間に及ぶ交渉の末、ミタル・スチール社によるTOB提案を受け入れ経営統合することを決定した。新会社名はアルセロール・ミタルとし、本社はルクセンブルクに置かれ、雇用の維持、アルセロール社の企業統治モデルが踏襲されることに。買収額は254億ユーロ、一株当たり40.4ユーロに決定した。合併交渉を行っていたロシアのセヴァースタル社とは今後も良好な関係を継続していくことが確認された。ユンカー首相、クレッケ経済・通商大臣は、共に、合併案の改善を多とし、ルクセンブルクの国益が保持されていることに鑑み、同決定に対し、歓迎の意を表した。政府は保有株を2.7%とし、残りの売却益は、SNCI(国営投融資会社)を通じて産業多角化計画に投資することを表明した。
(5)仏「クリアストリーム事件」に対する見解表明 クリアストリームの名前が、フランスにおけるスキャンダルを報道するために多く新聞に掲載され、ルクセンブルクが犯罪・資金洗浄の温床であるかのごとく扱われていることに深く傷ついていると同時に、遺憾に思っている旨が、ユンカー首相及びフリーデン国庫・予算大臣より表明された。フランス内政問題が元となっている今回の問題の主役に成ることはルクセンブルクの望むところではなく、ルクセンブルクの金融市場は、確固たる法規制下に置かれていることを強調。ルクセンブルクの発展及び経済の牽引力として金融セクターを改革したことが、周辺国の羨望を誘っていることは明らかであり、本件はフランス、ルクセンブルク関係に重い影を落とすものとなるだろうとの見解が表明された。
(6)ユンカー首相の2006年度シャルルマーニュ賞受賞
5月24日、アーヘンにおいて、ユンカー首相がシャルルマーニュ賞を受賞。ルクセンブルク人としては、1960年のジョセフ・ベッシュ国家名誉大臣兼国民議会議長、1986年のジャン大公(当時)についで3人目。ユンカー首相の20年にわたる欧州統合に向けた働きとリーダーシップを讃えた。受賞式典には約800人が出席。 3.主な出来事
(1)政治
(2)外交・安全保障・EU
|
Copyright (C): Ambassade du Japon au Luxembourg | Legal Matters | About Accessibility | Privacy Policy