ルクセンブルク情勢(2006年第3四半期7-9月) |
1.概況 |
【外交】 ● 大公殿下の中国公式訪問及び経済ミッションが実施され、政府及び企業関係者約100人が同行。成長の見込まれる中国市場に対して、ルクセンブルク企業の売り込みを図った。 この機会に上海に開設した総領事館は、中国で活動するルクセンブルク企業を支援する「経済発展会議所」の機能を兼ねる。 ● レバノン・イスラエル危機に際し、ルクセンブルク政府は、75万ユーロの人道支援金(内50万ユーロはUNHCR、WFP、赤十字国際委員会経由)の拠出及び拡大UNIF ILへのルクセンブルク軍の参加を決定した。 【EU】 ● ユンカー首相は、2007年1月1日から2年の任期で、ユーロ・グループ議長に再選された。 【経済】 ● アルセロール社が、ミタル・スチール社によるTOB提案を受け入れ合併が決定したことに基づき、取締役会は新CEOにユンク氏、CFOにミタル氏の子息であるアディータ・ミタル氏の就任を決定した。8月27日にはミタル・スチール社によるアルセロール社株式公開買付が終了したが、ルクセンブルクTOB法の強制買い付け条項が適用されるため継続して買い進める必要がある。 ● 欧州委員会は、ルクセンブルクに対して、1929年持株会社法に基づいて設立された持株会社が、公正な競争を阻害するものであるとして、違法とする判断を下した。この結果、同法は2006年中に廃止することが義務付けられた一方、猶予期間が2010年まで認められた。 ● インフレ率:7月1日現在で2.9%、8月1日現在で、2.8%、9月1日現在で2.4%となり、低下傾向にある。 ● 失業率:7月の失業率は4.1%、8月の失業率は4.1%、9月の失業率は4.4%となり、上昇傾向にある。 ● 銀行資産高: 7月8296億3700万ユーロ、8月8243億6700万ユーロ、9月未公表 ● 投資信託資産高:7月1兆6795億ユーロ、8月1兆7074億ユーロ、9月未公表 |
2.主要トピック (1)アンリ大公殿下の中国公式訪問と経済ミッション 9月5日から9日まで、アンリ大公殿下はアッセルボルン副首相兼外務移民大臣、クレッケ経済・通商大臣兼スポーツ大臣及び民間経済ミッションとともに中国を公式訪問した。大公殿下の中国公式訪問は27年ぶり 。 なお、 2004年11月にユンカー首相、クレッケ経済・通商大臣が中国公式実務訪問をしており、経済関係を中心とした中国との関係強化の動きが継続中。 胡錦濤国家主席及び温家宝首相との二国間会談を実施した他、上海総領事館及びルクセンブルク経済発展会議所(Luxembourg Board of Economic Development)の開館式典が執り行われた。 経済ミッションに関しては、中国側の行政当局と面識を持ち、各種協定を締結することが出来たことが大きな収穫と見られている。
(2)ユンカー首相のユーロ・グループ議長再選 2004年までユーロ圏各国の財務相の輪番制であったユーロ・グループ議長に代わり、2005年1月1日から2年の任期で初代の常任議長となったユンカー首相兼財務相は、9月8日に開催されたユーロ・グループ財務相会議において、再選された。任期は、2007年1月1日から2年間。
(3)アルセロール社、ミタル・スチール社との合併決定(続報) アルセロール社がミタル・スチール社によるTOB提案を受け入れ合併が決定したことに基づき、新CEOにユンク氏、CFOにミタル氏の子息であるアディータ・ミタル氏が就任することが決まった。 8月27日にはTOBが終了したが、ルクセンブルクTOB法の強制買い付け条項が適用されるため、ミタル・スチール社は継続してアルセロール社株を買い進める必要がある。
(4)OECDによるルクセンブルク経済に関する報告 ルクセンブルクの一人当たりGDPは世界最高レベルにあり、ルクセンブルク経済は極めて良好なパフォーマンスを見せているが、財政赤字は構造的要因により上昇し、財政状況は悪化している。特に年金制度は、その維持のため、将来的に改革を実施することが必須である。 失業手当額が極めて高いことが、ルクセンブルク居住者の失業、及び越境労働者の雇用の上昇に繋がっていることに鑑み、失業後一年を経過した手当ての金額の引き下げなどの制度改革が必要である。 PISA(学習到達度調査)の結果が、OECD加盟国平均以下であることを重く受け止め、語学クラス、履修課程の変更などに関する更なる柔軟な対応が必要である。 自由業、小売業に関する規制が特に厳格であり、市場へのアクセスを容易にすることが求められる。
(5)マイクロ・ファイナンス投資信託のためのラベル付与機関の創設 マイクロ・ファイナンス投資信託のための機関が、マリア・テレザ大公妃殿下を名誉総裁として、非営利団体Luxembourg Fund Labelling Agency(LuxFRAG)として設立された。 これは、マイクロファイナンスに投資する投資信託に対し、厳格な基準の下ラベルを付与することによって投資家保護及び投資信託のプローモーション活動を行うことを目的としたものである。
(6)1929年持株会社法の廃止 欧州委員会は、ルクセンブルクに対して、1929年持株会社法に基づいて設立された持株会社が、公正な競争を阻害するものであるとして違法とする判断を下した。 この結果、同法は2006年中に廃止することが義務付けられた一方、猶予期間が2010年まで認められた。 これに対してフリーデン国庫・予算大臣は、欧州委員会と意見を異にするとしながらも、金融市場の安定のため、本決定に従うことを表明した。さらに、本決定は、ルクセンブルク金融市場に対してネガティヴな影響を齎すものではないことを強調した。
(7)禁煙法の施行 7月13日に国民議会で採択されたルクセンブルクにおける禁煙法が9月1日に公布、同月5日に施行された。(概要:たばこ広告の一般的禁止及び喫煙禁止場所の列挙。たばこ製品のデザインの菓子、玩具を禁止し、16歳未満の子供に対する販売を禁止。)
3.主な出来事 (1)政治 【7月】 1日 フリーデン法務大臣兼国庫・予算大臣、アメリカン・セイクレッド・ハート大学より名誉法学博士号を授与 13日 禁煙法が国民議会で採択 18日 ディ・バルトロメオ保健大臣兼社会保障大臣、猛暑に備えて2006年行動計画を発表 【8月】 5日 ユンカー首相、スイスのハンス・ランジェ財団から「ヨーロッパ政治文化賞」受賞(於ジュネーブ) 【9月】 1日 労働法の発効 4日 フリーデン法務大臣、ルクセンブルク国籍取得に関する新しい法案を提出 5日 ディ・バルトロメオ保健大臣兼社会保障大臣、禁煙法を施行 8日 ディ・バルトロメオ保健大臣兼社会保障大臣、社会保障制度への加入を促す反非合法労働に関するキャンペーンを開始
(2)外交・安全保障・EU 【7月】 3日 ボット・オランダ外相の訪問(二国間関係、ベネルックスにおける協力について会談) 3日 ユンカー首相、フィンランド実務訪問(EU議長国との意見交換、特にEU・露関係の強化について) 4日 フリーデン法務大臣、パリ訪問(欧州における司法枠組みについてクレモン仏司法大臣と会談) 4日 シュミット外務担当大臣、ローマ訪問(欧州憲法条約の将来について) 6日 ビルツェン労働・雇用大臣兼文化・高等教育・研究大臣、ディ・バルトロメオ保険大臣兼社会保障大臣、EU雇用・社会保障・保健大臣非公式会議に出席(就労環境の質の向上による生産性向上について)(於ヘルシンキ) 7日 カラス欧州委員会副委員長の訪問(シュミット外務担当大臣と会談) 10日 ユンカー首相、ユーロ・グループ財務相会合に出席(於ブリュッセル) 10日~11日 シュミット外務担当大臣、「移民と開発に関するEU・アフリカ外相会議」に出席(於ラバト) 10日 ビルツェン労働・雇用大臣、クレッケ経済・通商大臣、「競争力」に関する非公式会合に出席(於ヘルシンキ、欧州における技術革新の強化について) 11日 EU加盟25ヶ国がスロベニアのユーロ・グループ加盟に最終合意 11日~13日 アッセルボルン副首相、ロシア訪問 13日 Laszlo Solyomハンガリー共和国大統領の訪問 14日 ユンカー首相、パリ訪問(フランス革命記念日式典出席) 14日 EU指令の期限内の国内法化を推進するための各省取り纏めを、外務省が担当することが決定 17日 アッセルボルン外相、シュミット外務担当大臣、EU総務・対外関係理事会に出席(於ブリュッセル) 18日 ボーデン農業・葡萄栽培・農村開発大臣、EU農業・漁業相理事会に出席(於ブリュッセル) 19日 ユンカー首相、ベルギー首相と第5回二国間定期会議(於シェンゲン) 20日 アッセルボルン外相、アルボール国連人権高等弁務官と会談(於ジュネーブ) 20日 モザンビーク共和国大統領の訪問(二国間関係、国際情勢について会談) 24日 フリーデン法務大臣、シュミット外務担当大臣、EU司法・内務相理事会に出席(於ブリュッセル) 25日 ボーデン農業・葡萄栽培・農村開発大臣、ブルガリア実務訪問(農業及び葡萄栽培の現場訪問、EU加盟問題、鳥インフルエンザについて会談) 25日~26日 フリーデン大臣、エストニア(タリン)及びリトアニア(リガ)訪問 25日~26日 ユンカー首相、ユーロ・グループ議長としてマドリッド訪問(スペイン財務相及び外相と会談) 26日 レバノン人道支援として62万5千ユーロの拠出を決定 26日~29日 アッセルボルン外相、ペルー訪問(アラン・ガルシア新ペルー大統領と会談) 31日 アッセルボルン外相、レバノン内戦の即時停戦を求める声明を発表 【8月】 1日 アッセルボルン外相、レバノン情勢に関するEU特別外相会合出席(於ブルッセル) 25日 アッセルボルン外相、レバノン情勢、イラン核問題、コンゴ(民)情勢に関する臨時EU対外関係理事会出席(於ブリュッセル) 25日 拡大UNIFILへのルクセンブルク軍の参加を決定 28日 ハンガリー首相の訪問、ユンカー首相と会談(二国間関係、ユーロ・グループへの参加等について) 29日 ユンカー首相、ベルギー王室ローラン王子の招きでブリュッセルのLa Maison europeenne des energies renouvelablesを視察 【9月】 1日 シュミット外務・移民担当大臣、リッポネン・フィンランド国会議長と会談(EU議長国、EU憲法条約の批准について) 1日 アッセルボルン外相、EU外相非公式会議出席(レバノン、イラン、ロシア) 3日 ビルツェン労働・雇用大臣、グローバル化における雇用と社会的意義についてASEM労働大臣会合に出席(於ポツダム) 4日 ユンカー首相、ベルリン訪問(二国間関係、EU議長国の準備作業) 7日 シュミット外務・移民担当大臣、アルバニアの欧州統合大臣と会談 8~9日 ユンカー首相、非公式ECOFIN出席(於ヘルシンキ) 8日 ユンカー首相のユーロ・グループ議長再選 10日~11日 ユンカー首相、アッセルボルン外相、ASEM6出席(於ヘルシンキ) 10日 ユンカー首相、ポーランド首相と二国間会談(於ASEM6) 11日 ユンカー首相、ベトナム首相と二国間会談(於ASEM6) 12日~14日 アッセルボルン外相、レバノン・イスラエル訪問 14日~15日 シュッミット外務・移民担当大臣、第61回国連総会出席(移民及び開発)(於ニューヨーク) 15日 アッセルボルン外相、EU総務・対外関係理事会出席(於ブリュッセル) 16日 ユンカー首相及びフリーデン予算大臣、G7財務相会議出席(於シンガポール) 17日~22日 アッセルボルン外相、第61回国連総会出席(22日、国連総会にて演説)、アフガニスタン大統領と会談 18日 ボーデン農業・葡萄栽培・農村開発大臣、モデール農業・葡萄栽培・農村開発長官、EU農業・漁業大臣会合出席(於ブリュッセル)(ワイン市場の地方自治体協会(l’organisation commune du marche(OCM) du vin)の改革について) 18日 フリーデン法務大臣兼国庫・予算大臣、法務大臣・内相会合出席(於シンガポール)(テロとの闘い、組織的犯罪、欧州・アジアの協力体制について) 19日~21日 ユンカー首相、カンボジア及びラオス公式訪問(デルボー・ステレス国民教育・職業訓練大臣、シルツ開発協力大臣、メルシュ・ルクセンブルク中央銀行総裁同行) 21日 モンテネグロと外交関係樹立 27日 アッセルボルン外相訪露、セヴァースタル・スチール会長のモルダショフ氏が名誉領事に任命される 28日 シルツ開発協力・人道援助大臣、NATO非公式国防相理事会出席(於スロベニア)
(3)経済 【7月】 5日 ルクセンブルク経済状況に関するOECD報告書の発表 7日 ルクセンブルク中央銀行は、2005年ルクセンブルク銀行ランキングを発表。トップはドイツ銀行、邦銀トップはノムラ・バンクの41位 京都議定書第2次CO2排出割当計画(2008-12)が閣議で採択 10日 OECDによるルクセンブルク経済に関する報告の実施 11日 観光統計発表。2005年の当国旅行者は前年比4%増、宿泊者は同9%増。外国からの訪問者はオランダ、ベルギー、ドイツの順 14日 連日の猛暑により、水源が危険水位に。飲料水の洗車等の利用を禁止 17日 本年第一四半期のGDP成長率は年率7.3%。2005年の成長率は最終的には4.6%と予想(ルクセンブルク統計局) 19日 政府は1929年法に基づく持株会社を2010年末までに廃止することを決定 20日 マイクロ・ファイナンス投資信託のためのラベル付与機関創設 20日 電子承認システム実施機関の設立を発表 21日 米系メーカーMoog社がベッテンブルクに水力コントロール・システムの工場(75人雇用)を新設 25日 今年上半期自動車販売実績第1位はルノー(4095台、全体の13.4%)、日本メーカーは10位のトヨタ(1086台、全体の3.5%)が最高 26日 ミタル・スチール社は91.88%のアルセロール社株式及び91.97%の議決権を取得したことを公表 28日 本日より8月21日まで建設労働者(18,000人)の一斉の夏休み 【8月】 4日 アルセロール社とミタル・スチール社の取締役会は、ローランド・ユンク氏を新CEOに任命 16日 ビッグマック1個を稼ぐために必要な労働時間はルクセンブルクでは14分(世界70都市中18位。UBS調べ) 17日 2005年の農地面積は約13万ha,前年比千ha増加 19日 労働組合団体のOGB-Lは、保安上の理由からフィンデル空港の民営化計画を非難 22日 ルクスエアーの2006年第2四半期の定時出発率は93.4%(平均81.1%)であり、欧州の航空会社29社の中でトップ。同社は1.34%の確率でロストバゲッジが発生。内85%が48時間以内に乗客の下に届けられた 22日 クレッケ経済大臣は、電気、天然ガス市場の自由化に関する法案を発表。2007年7月より最終消費者が供給業者を選べるようになる見込み 23日 2006年第1四半期のルクスエアーの搭乗率は52.8% 28日 ミタル・スチール社によるアルセロール社株式公開買付期間が終了 【9月】 1日 午前1時よりRTL(ルクセンブルク)はアナログ放送を中止 1日 携帯電話番号の最初の番号が0から6に変更 6日 欧州投資銀行(EIB)とルクセンブルク財務省はマイクロ・ファイナンスに関する協力合意に署名 13日 TDK、ルクセンブルク大学及び政府は、ルクセンブルク大学に「TDKヨーロッパ」講座を開設する合意文書に署名。エネルギー、環境分野の調査研究活動の促進を図り、予算は5億円の予定 14日 ユンカー首相、クレッケ経済・通商大臣、インド鉄鋼大臣と会談(アルセロール・ミタル社創設について) 18日 当国の水に関するサイト開設(http://gis.eau.etat.lu)
(4)大公室・社会 【7月】 1日 大公同妃両殿下の銀婚式の晩餐及び舞踏会が、コルマール・ベルグ城で開催 1日 現代美術館オープン 3日 ツール・ド・フランスがルクセンブルクを経由するルートで開幕(3日、エッシュ着、4日、エッシュ発ルクセンブルク縦断) 13~14日 ハンガリー共和国大統領の訪問(「中世末期の宮廷美術と文化展」開会式) 14日 夕方、ルクセンブルク発Athus行きの列車で火災。36人が負傷。原因は当国在住の中国人による放火 15日~23日 当館広報文化事業「日本週間」開催(於ラロシェット市) 18日 ツール・ド・フランスのアルプ=デュエズの重要なレースでルクセンブルク人のシュレック氏(26歳)が勝利 21日 ルクセンブルク在住者の99%以上が夏休みを海外で過ごすことを希望(EUROSTAT) 30日 エシュテルナッハで熱気球大会が開催され、今回は日本チームも参加 【8月】 3日 ルイ王子20歳誕生日 19日 2005年の養子は83件を処理し、41人が認められた 23~29日 タイで開催される2006子供ゲーム選手権に、ルクセンブルクから11人が参加 28日 生体認証情報搭載旅券システムの開始 30日 第16回世界AIDS会議がトロントで開催され、ルクセンブルク赤十字が赤リボン賞を受賞 【9月】 3~9日 大公殿下、国賓として中国訪問。アッセルボルン副首相兼外務移民大臣、クレッケ経済・通商大臣兼スポーツ大臣及び民間経済ミッション同行 16日~17日 当館協力広報文化事業「第14回盆栽ウィークエンド」開催(於デュフェルダンジュ市) 19日 大公同妃両殿下、ティオンビル(仏)友好訪問(86年ぶり)(「シャルロット大公妃殿下通り」のルクセンブルク・ハウス落成式出席) 19日 20歳未満の母は、1995年の既婚73人、未婚42人に対し、2005年は同36人、122人に 26日 2005年における、当国の貧困家庭(平均の60%未満:月1150ユーロ)比率は、11.4%で上昇傾向にある(ルクセンブルク統計局) 29日 ルイ王子御成婚
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