トップページ政治経済>四半期の動き 2008年第3四半期

 

ルクセンブルク情勢(2008年第4四半期10-12月)

.概況

【内政】

●移動の自由・移民法施行

●尊厳死の権利に関する法案との関連で、大公の法律裁可権を定める憲法条項改正へ

●国民議会、尊厳死の権利に関する法案可決

【外交】

●ユンカー首相、北京で開催されたASEM首脳会合に出席し、その後中国及びモンゴル実務訪問

●アッセルボルン副首相兼外務・移民大臣、国民議会において外交演説

【経済】

●アイスランド系カウプシング、グリトニル及びランズバンキ銀行が支払停止下に置かれる。同措置は1991年以来初めて

●政府、フォルティス・ルクセンブルク、デクシア・BIL両銀行に対する公的資金による支援を賄うため、1992年以来初の国債を発行

●インフレ率  :10月3.3%、11月2.0%、12月1.1%

●失業率    :10月4.5%、11月4.6%、12月4.7%

●投資信託資産高:10月1兆6,470億ユーロ、11月1兆6,042億ユーロ、12月1兆5,596億ユーロ

 

.主要トピック

(1)移動の自由・移民法施行(10月1日)

優秀な人材の国内経済参加をより一層促し、また関連EU法制を国内担保・実施する目的で移動の自由・移民法施行。特に就労目的でEU及びシェンゲン協定加盟国以外の第3国人(例えば日本企業駐在員)が3か月以上当地に滞在する場合、従来の労働許可証と滞在許可証が一体化された「在留資格」の中から、状況に見合った資格(下記注参照)の取得が必要となった。

 (注)特に日本企業駐在員に対しては、「高度有資格者」又は「一般給与所得者:企業内転勤」のいずれかの資格の給付が想定されている。

 

(2)クレッケ経済・通商大臣、秋の見本市開会式で恒例スピーチ(10月18日)

 金融危機の実態経済への影響が構造的なもので、長引く可能性が排除できず、産業多角化が必要であると指摘。また、エネルギー供給及びインフラの安全保障を最優先とする政策がかつてないほど求められていることに加え、あらゆる部門におけるエネルギー効率改善による更なる省エネや、再生可能エネルギーの開発を忘れてはならない旨述べた。

 

(3)政府、総額20億ユーロ規模の国債を12月4日に発行する旨発表(11月10日)

フォルティス・ルクセンブルク及びデクシア・BIL両銀行に対する公的資金による支援を賄うため、1992年以来初の国債発行。これにより、2008年における公的債務残高は、対GDP比で13.9%となる。

 

(4)欧州会計検査院のカルデイラ院長、欧州議会予算統制委員会で2007年度検査報告(一般予算分及び欧州開発基金分)を公表・説明(11月10日)

  主な内容は、

①連結財務諸表については無限定意見である一方、個別の会計支出の大部分については不適正意見であること

②EUの監督・統制システムを機能させるに当たり、現場の統制を増やすコストと、全ての間違いを捉えられない恐れのバランスが非常に重要であり、政治レベルでそのバランスを承認すべきであること

 

(5)アッセルボルン副首相兼外務・移民大臣、国民議会において外交演説(11月18日)

 アッセルボルン副首相兼外務・移民大臣は、国民議会で行った外交演説で、ここ数か月の出来事によってリスボン条約の重要性が明らかになったと指摘。また、金融危機の再発を避け経済が安定を取り戻すために議論すべきは、どのような規制が必要かであると述べる一方、銀行秘匿権と租税回避地を同視する議論は受け入れられない旨強調し、ルクセンブルクに対するフランスなどからの批判を牽制した。

 

(6)尊厳死に関する法案との関連で、大公の法律裁可権を定める憲法条項改正へ(12月2日)

特別な状況下で安楽死を認めようとする尊厳死法案の是非を巡り国論が二分していたが、信条的に安楽死を容認できないとする大公は、国民議会における同法案採決に先立ち、憲法上法案発効の要件となっている法律の裁可をしないと言明。これを受けユンカー首相は、事態の収拾を図るため、大公の法律裁可権を定める憲法条項を改正していく方針を表明した。

この後、憲法34条から大公の法律裁可権限を削除する憲法改正法案は、12月11日に賛成56・棄権1で国民議会の第1回目投票を通過。第2回目の投票は09年3月半ば頃行われる模様である。

(注)憲法改正法案の国民議会における議決は、第1回目投票と第2回目投票の間に3か月以上の時間を置いた2回に亘る全議員数の2/3以上の賛成を必要とする。

 

(7)尊厳死の権利に関する法案可決(12月18日)

国民議会は賛成31・反対26で尊厳死(安楽死)の権利に関する法案を可決。この法律は所定の特別な条件下で、不治の末期患者の命を絶つ処置を施した医者を罰しないことを規定する。なお、既にベルギーなどが類似の法律を有している。

 

.主な出来事

(1)内政

【10月】

1日 移動の自由・移民法施行

 7日 モデールト文化・高等教育・研究開発長官、ルクセンブルク語普及推進に向けた

政府施策について説明。07年以来ルクセンブルク語のオンライン辞書が利用可

能となっており、またルクセンブルク大学等にて同言語の研究・普及活動が推進

されている由

12日 大公殿下出席の下、国内で「国民連帯の記念日」関連式典挙行(注:第二次世界

大戦の犠牲者を追悼し、また当国民による対独レジスタンスを記念して毎年開催

される) 

14日 国民議会2007-2008年会期閉会。同時に2008-2009年会期開会

15日 国民議会、国籍法改正法案可決

 

【11月】

11日 国民議会、外国人の受入れと統合に関する法案可決

15日 ルクセンブルガー・ヴォルト紙、国民の78%が金融危機は生活に影響しているとの世論調査結果を報道。一方でユンカー首相の支持率は94%に上昇

17日 政府、各種行政手続きを利用者に分かり易くする目的で、新たなポータルサイト「www.guichet.lu」開設

 

【12月】

2日 大公殿下、国民議会が尊厳死の権利に関する法律を可決しても同法案を裁可しな

いと発言。これを受け、ユンカー首相、事態収拾を図るため、大公の法律裁可権

を定める憲法条項を改正していく方針を表明 

11日 ・国民議会、憲法34条から大公の法律裁可権を削除する憲法改正法案の第1回

投票を実施。賛成56・棄権1で通過

・ル・ジュディ紙、当国君主制に係わる世論調査結果を掲載。ルクセンブルク人

の58%が君主制維持に賛成、36%が反対、現大公は退位すべき31%、退位すべきでない57%

18日 国民議会、賛成31・反対26で尊厳死法案可決

 

(2)外交・安全保障・EU

【10月】

1~2日 アッセルボルン副首相兼外務・移民大臣、第2回ベネルクス・バルト諸国閣僚

会合出席(於エストニア)

9~10日 シルツ国防大臣、NATO非公式国防相会合出席(於ブカレスト)

13日 ルクセンブルクに於いてEU総務・対外関係理事会開催。グルジア・ロシア情勢及び国際金融危機等への対応につき協議 

15~16日 ユンカー首相、欧州理事会出席(於ブリュッセル)

17日 シルツ国防大臣、訪米しゲーツ米国防長官と会見

17~19日 モデールト文化・高等教育・研究開発長官、第12回仏語圏サミット出席(於ケベック)

23日 アッセルボルン外相、訪露しラヴロフ外相と会談

24日 ・ルクセンブルク/仏/独/ベルギーの4か国法務・内相、越境犯罪(人身売買、麻薬取引、不法移民等)に対する協力を強化する文書に署名(於ルクセンブルク)

    ・当地ラ・ヴォワ紙、レディング欧州委員(情報社会・メディア担当)が3期目も務める意向と報道

24~25日 ユンカー首相、第7回ASEM首脳会合出席(於北京)  

26~29日 ユンカー首相、デルボー・ステレス国民教育・職業訓練相及びシルツ開発協力・コミュニケーション・国防相と共に中国及びモンゴルを実務訪問

 

【11月】

2~6日 アッセルボルン副首相兼外相、南ア、ボツワナを実務訪問

5日  ユンカー首相、オバマ上院議員の米大統領選挙当選を受け祝意を表明

6日  カゼム・ジャリリ氏を団長とするイラン議会ミッション来訪

7日  ユンカー首相、経済・金融危機に対するG20会合を前に開催されたEU首脳非公式会合に出席

9日  秋葉広島市長、「平和市長会議」の関係でルクセンブルク市来訪。市庁舎でスピーチ

10日 欧州会計検査院のカルデイラ院長、欧州議会予算統制委員会で07年度検査報告(一般予算分及び欧州開発基金分)を公表・説明

12日 ・チュニジアのアブダッラー外相来訪

・インドネシアのワヒッド国民協議会議長来訪

14日 ユンカー首相、欧州建設に対する貢献が認められ、ジャン・モネ基金の金賞受賞(於ローザンヌ)

18日 アッセルボルン副首相兼外務・移民大臣、国民議会において外交演説

19日 08年1月よりグラン・レジョンの議長国を務めるルクセンブルクでグラン・レジョン中間サミット開催

21日 カーボ・ヴェルデのブリト外相来訪

24~26日 フィンランドのハロネン大統領、国賓として来訪

 

【12月】

1日  シルツ開発協力・人道援助大臣、ドーハ開発資金会合出席

1~2日 欧州会計検査院、EU27か国の各会計検査院長による連絡委員会を開催。E

U加盟国のみならず、加盟候補国等の各会計検査院長も出席 

2日  シュミット外務・移民担当大臣、当国が人権状況に関する定期レビュー対象となった国連人権理事会に出席(於ジュネーブ) 

2~3日 アッセルボルン副首相兼外相、NATO外相会合出席(於ブリュッセル)

3日  ・ユンカー首相、来訪したアイルランドのコーエン首相と会談

・アッセルボルン副首相兼外相、クラスター弾禁止条約に署名(於オスロ)

3~4日 シルツ国防大臣、アフガニスタンを訪問し、NATO・ISAFに参加しているルクセンブルク兵(9名)を激励 

4日  ・ユンカー首相、来訪のバローゾ欧州委員会委員長と会談。景気浮揚策、リスボン条約の今後等について意見交換

・アッセルボルン副首相兼外相、第16回OSCE閣僚会合に出席(於ヘルシンキ)

8日  ノルウェーのヤグランド国民議会議長来訪

9日  欧州会計検査院、オーストリア、カナダ、ノルウェー及びポルトガル各国会計検査院の職員から構成される国際チームによるピア・レビュー報告を公表 

11~12日 ユンカー首相、欧州理事会出席(於ブリュッセル)

12日 アッセルボルン副首相兼外相、世界人権宣言60周年記念行事に出席(於ジュネーブ)

17日 セルビアのジェレミック外相来訪

18日 欧州会計検査院、EUによる穀物備蓄補助に関する特別検査報告を発表。現下の上昇傾向にある相場や備蓄の不足の改善策が可及的速やかに実施されるよう強く勧告

19日 ユンカー首相、訪仏しサルコジ大統領と会談

22日 アッセルボルン副首相兼外相、ベトナムを訪問

30日 アッセルボルン副首相兼外相、ガザ情勢を巡るEU非公式外相会合に出席(於パリ)

 

(3)経済

【10月】

1日  政府、2009年予算案(歳入90億5690万ユーロ、歳出90億4380万ユーロ)を国民議会に提出

2日  ルックス環境大臣兼運輸大臣、温室効果ガス排出量、特に国内の自動車由来の温室効果ガス排出量削減策に関する政策評価を実施

3日  エルミンガー・ルクセンブルク市長、IMS(社会動向研究所)に於ける講演会で、2050年に国内人口は60~70万人となり、当国経済に20万人の越境通勤者が必要となる見込みなどと発言

6~7日 当地TNS ILRES研究所の意識調査によると、86%の居住者がフォルティス・ルクセンブルク、デクシア・BIL両銀行への公的資本の注入を支持

8日  ・クレッケ経済・通商大臣、2008年版競争力総括「更なる購買力のための更なる競争力」を公表。07年のルクセンブルクの競争力は、EU中第9位で前年から3つ順位を下げた

・アイスランド系グリトニル、ランズバンキ両銀行、支払停止下に置かれる

9日   アイスランド系カウプシング銀行、支払停止下に置かれる

12日 東京、ルクセンブルク両証券取引所、提携のための覚書を締結

15日 17日の国際貧困撲滅デーを前に、ルクセンブルク統計局、労働及び社会的結束に関する第4回報告書(対象:2007年)を発行。年間可処分所得の中央値の60%未満との貧困定義に基づけば、国内居住者の7人に1人が貧困者とみなされると報告

18日 クレッケ経済・通商大臣、秋の見本市の開会式で恒例スピーチ

20~22日 フリーデン国庫・予算大臣、金融ミッションでクウェート、カタール両国を訪問

22~23日 ギヨーム皇太子殿下、クレッケ経済・通商大臣を帯同しニューヨークを訪問。主に米国の物流及び医療・製薬企業関係者と接触

 

【11月】

 5日 アルセロール・ミタル社、2008年第3四半期決算を公表。38億ドルの純利

 6日 ボーデン中産階級・観光・住宅大臣、企業向け行政簡素化政策の中間報告を公表

10日 ・ルクセンブルク政府、総額20億ユーロ規模の国債発行を発表

    ・ユンカー首相、仏ラジオ局France Interのインタビューで、欧州諸国の連携による自動車産業に対する国家補助に前向きである旨発言

20日 預金保険機構、支払停止下に置かれているアイスランド系カウプシング銀行の顧客に対し、保険金の支払を発表

25日 国賓として訪問中のハロネン・フィンランド大統領、アンリ大公殿下ご臨席の下、当地商工会議所主催によるビジネスセミナー「エネルギー、環境及びイノベーション-ビジネスの新たな好機」に参加し、基調講演

25~26日 ルクセンブルク投資信託協会、オルタナティブ投資ファンドセミナー開催

27日 アルセロール・ミタル社、ルクセンブルク国内の400名を含む全世界で9000名の人員削減策を発表 

   

【12月】

 2日 当地紙レッツェブルガー・ジャーナル、近隣諸国と比べて当国の住居価格が最高

であるとする独LBSの不動産価格調査結果を報道。これによると2位ベルギー、

3位オランダ、4位フランス、5位アイルランド、6位デンマーク、7位イギリ

ス、8位ドイツ

3日 ルクセンブルク統計局、11月のインフレ率が年率2.0%に大きく下降した旨

発表。他方で、6月のインフレ率(注:年率4.3%)により、09年3月1日か

ら賃金、公務員給与及び年金は予定どおり2.5%引き上げられる旨指摘

8日 ディ・バルトロメオ社会保障大臣、2007年社会保障総報告書を発表。これに

関し、9日付当地紙ターゲブラットのインタビューで、積立金は、金融危機の被

害を受けておらず、むしろ07年には8億ユーロが上積みされたこと、08年も

同額近くに達する見込みと発言

11日 欧州理事会を前に、当地紙ルクセンブルガー・ヴォルト、ユンカー首相に対するインタビュー記事を掲載。この中で同首相は、現在の経済危機に対する経済、政治的解答は、実質的で、速やかに結論が出され、期間限定かつ的確な目標を見据えたものでなければならないこと、05年のルクセンブルク議長国当時に採択された成長・安定協定に係る修正事項(当館注:弾力的な運用を認める事項)を尊重しなければならないなどと発言

12日 ・ルクセンブルク中央銀行、2008年下半期マクロ経済報告を公表

・預金の支払停止下に置かれていたアイスランド系ランズバンキ銀行の清算が決定

13~17日 クレッケ経済・通商大臣、主として中国市場で業務展開中の企業で構成さ

れる経済ミッションを率いて訪中

15日 ・ルックス環境大臣兼運輸大臣、12日の欧州理事会で合意された欧州エネルギー・気候変動政策パッケージ及びポズナニで開催されていた国連気候変動枠組み条約締約国会議に於ける合意は、産業界にとって可能な最良の合意であるとコメント

    ・ルクセンブルク政府が公的資金の注入により保有していたフォルティス・ルクセンブルク銀行(現BGL)の転換社債が株式化され、政府持ち株が同行株式の49.9%となる

16日 ・政府提出の09年予算案、国民議会において賛成38票、反対22票で原案どおり可決

・約6億ユーロ規模の景気対策案、国民議会において満場一致で可決

17日 ルクセンブルク中央銀行、デンマーク中央銀行とシステム監督提携のための覚書を締結 

 

(4)大公室・社会

【10月】

24日 大公宮府、ジャン大公殿下がブリュッセルの病院で腰部右側に人工器官を埋め込むため外科手術を受け、手術は成功したと発表。その後ジャン大公殿下は10月31日に退院

 

【11月】

3日~6日 マリア・テレザ大公妃殿下、シルツ開発協力・人道援助大臣及びフリーデン法務大臣兼国庫・予算大臣を帯同しセネガルを訪問。ワッド大統領夫妻と面談。またマイクロクレジット事業を行う団体を現場訪問

11日 ギヨーム皇太子殿下、27歳の誕生日

12日 マリア・テレザ大公妃殿下、エチオピア団体のブーサ・ゴノファに2008年欧州マイクロクレジット賞を授与

 

【12月】

4日 キルシュベルク地区において欧州司法裁判所の新庁舎竣工式典挙行

24日 大公殿下、国民へ向け恒例のクリスマス演説。経済危機に対し国民の連帯を呼びかけ、また安楽死法案を巡る議論に関し、あらためて大公殿下自身の立場を説明

 

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