デレス中間層大臣及びファイヨ経済大臣の会見:新たな経済対策パッケージの詳細(5月22日)

令和2年5月26日
 5月22日,ファイヨ経済大臣及びデレス中間層大臣は会見を行い,新型コロナウイルスに係る新たな経済対策パッケージについて発表したところ,概要以下のとおり。

【ポイント】
●持続可能性とデジタル化のための3つの新しい援助を導入,具体的には
1企業の事業運営又は組織体制の革新を支援
2エネルギー効率と環境に配慮した経済活動への投資を支援
3企業の新規投資に対する支援
●中小企業支援規模は,この2カ月間で例年の年間支援額の7倍。
●現状,レストラン等は6月1日からの再開とされているが,聖霊降臨祭(ペンテコステ)の週末(5月30日~31日)にレストラン等の営業を再開することもオプションとして検討されており,25日段階で最新のデータを分析し,その後に詳細を発表予定。

【会見概要】

(ファイヨ経済大臣)
1 経済の現状等
(1)我々は現在,制限措置が徐々に解除される段階にあることから,企業をサポートし安定させることが重要である。一時的失業制度は今後も維持され,その主な目標は依然として雇用を維持することである。一方,今後は,必要に応じて解雇を企業再編過程の一部とすることも可能である。
(2)我々は,経済の再開に当たって,将来の展望も示す必要がある。特に,持続可能性/循環経済とデジタル化という2つの優先事項に関連して,現在の危機においても企業が先を見据えることを可能にするための対策が決定された。今後数カ月から数年の見通しは良くはない。今年は深刻な景気後退が予想されるため,不確実性があり,企業が投資の延期またはキャンセルを検討していることは当然のことである。
(3)我々は,国の投資計画を削減せず,場合によっては更なる投資を行うことで,景気後退に対抗することを決定した。企業にも同様に働きかけたい。企業の投資をサポートして,企業がこの機会に近代化できるようにしたいと考えている。

2 持続可能性とデジタル化に係る援助の具体的内容
(1)我々は今,持続可能性とデジタル化のための3つの新しい援助を導入する。これらの援助はすべて,返済不要の直接援助である。欧州の制度の中で動いているため,対象となる投資の上限は80万ユーロとなる。これらの援助の総費用は3,000万ユーロと推定されている。援助による影響を一定程度以上与えたいので,投資には最低額が設けられている。中小企業の場合は最低2万ユーロ,中規模企業の場合は最低5万ユーロ,大企業の場合は最低25万ユーロとなる。収入減が少なくとも15%以上である必要があり,プロジェクトは2020年12月1日までに提出される必要がある。

ア 会社の事業運営又は組織の革新を支援
 デジタル化に向けた投資が援助の主対象。中小企業に対しては,補助率最大50%。例えば,プロダクトチェーンを新たなソフトウェアや新たなテクノロジーによって改善する場合。この援助では,人件費と投資費用が対象。企業が独自のデータを使用して,より効率的で持続可能な方法で運営されることを目的としている。

イ エネルギー効率と環境に配慮した経済活動への投資を支援
 CO2排出量の削減のための投資。大企業,特に産業分野では,補助率が50%増加。

ウ 企業の新規投資に対する支援
 新たな機器の購入のための投資。会社の規模に応じて,最大20~30%を政府の補助でカバーできる(大企業は20%,中規模企業は25%,中小企業は30%)。循環経済のための投資を行う場合は,更に20%を追加できる。

(2)Luxinnovationで取り組んでいる別のイニシアチブとして,ビジネスの戦略的方向性に関するものがある。我々は新しい支援プログラムを提供して,企業を評価し,危機時に活動を再開するためのアドバイスと支援を提供する。事前に行ったパイロットプロジェクトの結果がポジティブなものだったので,本格的に開始される。経済省は,この評価と支援の費用の50%を補助する。

(デレス中間層大臣)
3 中小企業支援の概要等
(1)我々の日常の活動が制限されていたことにより,多くの人が中小企業の持つ社会的役割に気づいた。我々は,中小企業や個人事業主を大規模にサポートしてきた。例えば,20名までの従業員を抱える小規模企業を支援し,6,500万ユーロの返済不要の直接援助を行った。また,あらゆる規模の企業に返済不要の資金として3,000万ユーロ以上を支払った。 また,企業により多くの流動性を提供するために,この援助の申請期間を2カ月から6カ月に増やすことを決定した。したがって,中小企業への援助額に関して言えば,この2カ月間で支払われた額は例年の年間支援額の7倍に達している。
(2)危機の間にオンライン取引が増加し,3月15日から5月15日まで,オンラインのプラットフォームを通じて15,000件の注文が行われた。店舗でのビジネスがオープンで利用可能であることを人々に知らせる啓発キャンペーンを開始する。また,国内観光促進のための50ユーロの観光クーポン(国内宿泊施設で利用するため)は,世界の観光と国境の現状を考慮すると,代替手段がないものであろう。

4 質疑応答

(1)(観光クーポンの金額が50ユーロである理由,いつ配布されるか。)
 クーポンの配布は準備中である。人々は通知を受け取ることとなるであろう,詳細は来週以降に明らかとなる。50ユーロは,ルクセンブルクのキャンプ場やホテルで1泊することを奨励するインセンティブであり,金額は宿泊平均価格に基づいているわけではない。

(2)(デレス大臣,首相及び他の閣僚との間で,レストランの再開時期についての意見の相違はあるか。)
 我々は,ホテル,レストラン,カフェ部門ができるだけ早く再開することを望んでいるが,まだ危機の最中であり,決定を下す前に,週末の数字を見ていく必要がある。

(3)(現状,投資援助は企業によって活用されると思うか。)
 自分(ファイヨ大臣)は現在,企業を訪問して話をしているが,その企業の中には投資を計画中であるとしているところもあった。援助額の増加が企業に投資計画を維持する動機付けになることを願っているが,特に大企業は投資を行う可能性が高いかもしれない。

(4)(企業の倒産は避けられないかもしれないと言っていたが,具体的数字はまだ不明か。)
 数値はまだない。これに関する統計を得るには時期尚早である。我々は倒産を防ぎ,被害を軽減するためにできる限りのことを試みる。回復のための新しいパッケージは,倒産を防ぐための追加の手段である。たとえば,ホテル,レストラン,カフェ部門や,閉鎖を余儀なくされたその他のビジネスを対象とした支援策に何を期待されているかはわかっている。顧客が店舗を訪れるに際して安心感を与えるために,店舗で役立つ安全ラベルを導入した。

(5)(ペンテコステの週末(5月30日~31日)は非常に重要であり,多くの人がこの週末に間に合うよう店舗を再開することを望んでいるが,これを検討しているか。)
 それは新規感染者数等のデータによる。ペンテコステの週末の再開を含む多くのオプションを検討している。ただし,現時点では6月1日が店舗の営業再開日とされている。25日には,最新のデータを評価した後,新たな発表を行う。

(6)夏のルクセンブルク農村地域には,オランダやベルギーから多くの観光客が訪れるが,今年もそのような観光は可能か。)
 隣国からは車でルクセンブルクに旅行する方が簡単なので,隣国の国境緩和が発表された場合にはこれらの観光客はすぐに旅行計画を立てることができるだろう。アセルボーン外務大臣は,国境の再開について近隣諸国と連絡を取り合っている。EUの観光客はルクセンブルクに来て宿泊することができ,ルクセンブルク側からの制限はない。