レナート保健大臣及びマイシュ高等教育・研究大臣等の会見:当国で実施される大規模検査の状況等(5月22日)

令和2年5月26日
 5月22日,レナート保健大臣,マイシュ高等教育・研究大臣,ネールバス・ルクセンブルク保健研究所(LIH)所長及びウィルムス・ルクセンブルク大学生命医学センター教授は会見を行い,当国の大規模検査の動向について説明したところ,概要以下のとおり。

【ポイント】
●当国でのPCR検査の実施戦略は,段階ごとに,
1症状の発生に対応して行われるもの,
2感染の影響が大きい人々へ積極的に行われるもの,
3隔離緩和戦略に伴うクラスターでの陽性率を調べるもの
へと進化してきており、この第3段階をさらに発展させて大規模検査へと拡充する。
●5月25日から7月28日まで、17のドライブスルー検査ステーション等において、市民と越境労働者向けの大規模な検査が可能となる。
●大規模検査戦略は,市民と越境労働者全体を対象としているものの,対象となるセクターの優先順位が設定され,それに従って検査を受ける人々が割り当てられるプロジェクトであることから、検査を受けるよう勧奨を受けた人々のみが検査を受けることとなる。
●大規模検査戦略による検査は任意であり、市民は書面による通知の受領後に検査を受けることができる。
●なお、対象セクターとの関連で、ルクセンブルク空港当局との間で、運航の再開を容易にするために、出入国者という集団に対して検査を実施できるかの議論も行われた。

 【会見概要】
(レナート保健大臣)
1 当国のウイルス検査戦略の概要
(1)現在の新型コロナウイルスに関する状況とウイルス検査戦略に関する情報について説明したい。ルクセンブルクは、世界各地の専門家からの勧告に沿って対策を行っている。検査がウイルスに対する唯一の効果的な武器であるため、最初から徹底的な検査戦略を立ててきた。検査そのものは変わっておらず、進化したのは検査戦略(検査の対象、頻度等)である。我々の徹底的な検査の理由は、検査の実施数でヨーロッパにおいて1位になることではない。一時的にトップとなっていたが、アイスランドに追い抜かれた。検査を行うのは,無意識のうちにウイルスを運んでいる可能性のある個人を特定し、速やかかつ効率的に隔離することができるようにすることで,感染の連鎖を断ち切るためである。

2 当国が実施する2つの検査手法
 我々が行う2種類の検査を簡単に説明すると以下のとおりである。
(1)PCR検査:鼻や喉からサンプルを採取し、その結果から感染の有無を確認する。本日まで、合計64,981件のPCR検査が行われた。検査は3つの異なる戦略で実施されている。

ア 症状の発生に対応して行われるもの:特定できない病気の症状を示している可能性がある状況への対応として検査が行われる。これらの検査は以前より多く行われているが、その主な理由は、当時(感染蔓延初期)は十分な検査キットがなかったためである。当時、検査は非常に強い症状を示していた人に限定されていたが、現在、軽度の症状を含む、あらゆる症状を示している人を検査できる。その背後にある手法とロジックは変更されていない。

イ 感染の影響が大きい人々へ積極的に行われるもの:必ずしも症状を示していなくとも、感染に対して脆弱な人々とともに働き又は感染に対して脆弱な人々と同じ環境で生活している人々に対して,それらのグループの中でウイルスの有病率を分析するために行われた検査などである。4月20日以降、介護施設、老人ホームに住む脆弱な住民と介護スタッフの両方が検査された。特別養護老人ホームの居住者は、ロックダウン対策で最も大きな打撃を受け、海外の状況で見られたようにウイルス感染が劇的な結果をもたらした可能性のある人々である。これまでに5,780人の居住者のうち4,309人が検査されており、4.8%が陽性となっている。この率は低位であると言っていいだろう。同戦略の2つ目の例は、病院で新型コロナウイルス陽性者と接触し、または接触したことがある人々に対する検査とである。3つ目の例としては、新型コロナウイルス陽性者と緊密に接触した後に隔離された人々に対するものである。検査は、隔離5日目に任意で提供された。その結果陰性であれば、強制的な14日間の隔離を続行することなく、7日目に通常の生活に戻ることができた。

ウ 隔離緩和戦略に伴うクラスターでの陽性率を調べるもの:様々なセクターが再開されると、割り当てられた各セクターが2週間ごとに定期的に検査され、各セクター内の感染リスクが分析される。これまでに検査されたうちの1つは建設セクターであり、これまでに2ラウンドの検査が行われた。1回目の陽性率は2.2%、2回目は0.8%となり、感染者を早期に発見し隔離する戦略が成功したことを示した。もう1つのセクターは、中等学校と小学校の再開に伴い対象となった教育セクターとパーソナルケアセクターである。ルクセンブルク空港当局との間で、運航の再開を容易にするために,出入国者に対して同様の検査戦略を実施できるかどうか議論がなされた。クラスター陽性率検査は,大規模検査戦略に進化している。

(2)血液サンプルを用いた抗体検査:CON-VINCE研究プロジェクト(当館注:新型コロナウイルスの感染経路と有病率について調査・分析するプロジェクト)において実行される検査である。CON-VINCE研究プロジェクトの第2フェーズはすでに始まっており、まもなく第3フェーズに移行する。

(マイシュ高等教育・研究大臣)
3 大規模検査戦略の詳細
(1)Covid-19タスクフォース(当館注:当国研究所,病院,政府間の協力のために設置されたタスクフォース)によって打ち出されたプロジェクトの1つは、大規模検査である。これは、世界規模での検査戦略に非常に上手く統合されていくものである。大規模検査は、ウイルスとの共生を促進するためにウイルスを理解することを目的としており、単なる研究プロジェクトではない。大規模検査によって、より安全に生活でき、新たな感染を回避できる。無症候性の人がどのように感染を拡大させるかについて知るためにも検査は重要である。これらの検査は任意であり、書面による通知の受領後に検査を受けることができる。人々は自分の良心に従って行動することができるが、検査を受けることは集団の幸福のためであることを覚えておくことが重要だ。
(2)定期的な検査の勧奨を受ける3つの分類は下記のとおりである。この戦略により、感染の第二波を回避し、時間をかけて自由を取り戻し、通常のライフスタイルに戻していくことができる。
ア 職業(医療関係者、介護者、教師、保育スタッフなど)が原因でウイルスに感染しやすい状況にある人々
イ 物理的に職場に戻る人々(全員が検査を受けるわけではないが、職場環境に戻ったら、感染率の変化があるかどうかを監視するための代表的なサンプルである)
ウ 地域および年齢によって決定された、全母集団の代表サンプルとなる人々

 (ネールバス所長)
4 大規模検査の背景と検査への参加の重要性
(1)パートナーとなる機関とともに、初期段階で感染をフィルタリングする検査戦略を実装することができた。危機の最初の段階では、この目に見えないウイルスに対する不安だけでなく多くの不確実性があり、政府はミュルーズやミラノで見られたような同様の重大な状況を回避するために初期段階での適切な決定を行った。
(2)しかし、現在私たちが直面しているのは、予防パラドックスと呼ばれるものである。つまり、予防策が非常に成功したため、これらの対策の重要性を忘れてしまうということである。ロックダウンを最初に開始したときと比較して、無症候性の陽性者の数が増えた。現在提案されている対策は制限緩和のためであり,自発的検査への参加が重要である。

 (ウィルムス教授)
5 大規模検査の実施場所等
(1)大規模検査の目的は,7月末までにできるだけ多くの無症候性の陽性者の症例を発見することである。
(2)5月25日から7月28日まで、17のドライブスルー検査ステーション、2つのウォークスルー検査ステーションとバイクスルー検査ステーション、Rotondes(当館注:当国の文化センターの1つ)による追加のウォークスルーポイント1カ所において,市民と越境労働者の大規模な検査が可能となる。これらの検査ステーションはすべて同時に稼働することができないのは明らかだが、目標は1日あたり20,000件の検査容量に到達することである。
(3)前述の3つの特定のターゲットカテゴリから選択された人々は、自宅に送られる手紙を介して検査を勧奨される。検査は純粋に自発的なものである。
(4)職業が原因でウイルスに感染しやすい状況にある人は、効果的なモニタリングのために2週間ごとに検査を勧奨される。物理的に職場に戻る人々に関して,各部門で測定された有病率のデータは、強力な対策を特定の部門のみで再度実施する必要がある場合に必要な情報を得る基礎となる。全母集団の代表サンプルとなる人々は毎週検査を受けるよう勧奨される。

6 大規模検査戦略の実施スケジュール等
 実施に関して明確な計画はあるが、感染クラスターが発生した場合に迅速に対応するために、ある程度の柔軟性を維持する必要がある。人々は通知を受け取り、その後、オンラインポータル経由で予約をする。検査当日、喉のサンプルを採取し、2日以内にSMSで結果が明らかになる。陽性とわかった場合、受検者は担当者からすぐに連絡を受け、義務的隔離が行われ、検査担当者は陽性者との接触者に対する連絡を行う。
(1)5月25日から
カテゴリ1:美容院とパーソナルケア部門で働く人々、保育スタッフ
カテゴリ2:建設セクター(建設セクターは以前の有病率検査の実施対象だが,建設セクターは長い間再開しているため、効果的な監視を維持するために再検査することが重要)
(2)6月1日から
カテゴリ1:医療スタッフ、警官、薬局スタッフ、刑務所スタッフ
カテゴリ2:小学校の教師と教育スタッフ、産業部門労働者と商業部門労働者

7 質疑応答

(1)(カテゴリ1と2の検査への勧奨について述べたが、カテゴリ3に勧奨通知が送信されるのはいつか。)
 2週間後に連絡がある。

(2)(勧奨を受けたが検査を拒否した場合はどうなるか。)
 柔軟性を維持する必要がある。検査を受けた人数について受け取った数値から気づいたように、数値は非常に多様である。私たちの側から見ると、集団の安全のために検査を受けることを勧めるが、受検率が低い場合は、それに応じて検査戦略を適応させる必要がある。検査は任意のままである。

(3)(検査済みの生徒と教師等のスタッフに関する数字はあるか。)
 プレス発表でも公開される。有病率は変動するが、0.3%のマージン内にとどまる。有病率調査はルクセンブルクの市民、つまりこの地域に住んでいる人々を対象に実施された調査でもあったことも重要である。制限緩和について考えるときは、越境労働者も含める必要があり、近隣諸国ではまだ状況が改善されていないことを覚えておく必要がある。もちろん、結果として、越境労働を考慮に入れると、我々の有病率と感染率は高くなる。

(4)(CON-VINCE研究プロジェクトにおいて人々は最終的に研究プロジェクトから抜けていくのではないか。)
 第2フェーズでは、最初に参加した参加者のほとんど全員が残っているが最終的に約3%が研究から脱落した。概して、人々は参加する意欲がある。

(5)(カテゴリ2と3のサンプルの大きさはどれくらいか。また、コンセプトが意味を成すにはサンプル数がどれだけ大きい必要があるのか。)
 各セクターによって異なるが、できるだけ代表的になるように統計的に必要な検査を行う。特に商業部門を代表する階層を作成しようとしている。数に関しては、特定のセクターでは約1,000人を対象としているが、別のセクターでは300人にまで減少する可能性がある。代表的な人口の例となるこれらの派遣グループは、数週間にわたって個別に検査される。たとえば、学生の数は約90,000人である。これらの対象は国のさまざまな地域のさまざまな学校を代表する18,000のサブグループに分割される。そのため、大規模な検査だけでなく、効果的な監視にもなる。これらのサブグループ内の特定の学校で感染が急増した場合、効率的な監視戦略のおかげで、地域レベルで介入することができる。戦略を価値あるものにするために参加数のパーセンテージがどのくらいでなければならないかという質問に戻ると、最初のグループのサンプルの参加は9?40%の範囲であった。なお,プロジェクトは3か月にわたって実施される。

(6)(学校内で陽性のケースが確認された場合はどうなるか。)
 通常の感染者との接触に関する追跡に関する手順が執られる、陽性者が密に接触していた教師と生徒が呼び出され、検査を受けるように求められる。クラス全体を隔離する必要がないように、個人間の必要な距離を強化および維持するために、クラスを毎週交互に2つのグループに分ける安全対策が実装された。社会的距離を保つと、隔離する必要がある人の数は明らかに減少する。

(7)(誰でも大規模検査に参加できるか)
 優先順位が設定され,それに従って検査を受ける人々が割り当てられるプロジェクトであることから、勧奨を受けた人々のみが検査を受けることが重要である。